セーラー万年筆様

セーラー万年筆は、日本で初めて14金のペン先を作った筆記具メーカーです。1911年の創業以来一貫して高品質な万年筆を作り続け、国内外で各賞を受賞しています。筆記具の使用機会が減少する中、機能美を極めた万年筆の熱心なユーザーを獲得。新しいコンセプトの製品を次々と発表し、インクもあわせて人気を博しています。全国巡回で万年筆の書き味を調整するペンメンテナンスも開催中です。その他にも製品に傷をつけないための成形機の取り出しロボット事業を展開。妥協せず、細部までこだわり抜く姿勢でものづくりに向かっています。

セーラー万年筆株式会社  [ 筆記具製造 ] 

所在地: (本社)広島県呉市天応西条2-1-63

TEL: 0823-38-7144 

URL: https://sailor.co.jp/

現実での加工と図面上の加工の違いだけ。
3D CADで受け継がれる技術。

世界にはばたく万年筆を生み出す機械装置を設計

(里保氏)セーラー万年筆では、万年筆をメインに、ボールペン、シャープペン、マーカー、筆ペン、字消しペン等、筆記具全般の製造、別事業として青梅(東京)で成形機の取り出しロボットの製造を行っています。
(瀬戸本氏)IRONCADでは万年筆関係の機械装置、生産装置を設計しています。ペン先本体の加工機のようなものですね。ペン先には玉つけや鋸割りといった細かい工程が10、20とあるのですが、手作業で行っているものが多いんです。そこを機械化、自動化をしていくということに今は注力しています。


製造部 課長 里保 研二 氏

新人のための3DCADで結果的に工数削減

(瀬戸本氏) 新入社員が入る時に、若い世代に2次元を使わせていくのは嫌だ、3D化をこのタイミングでしてあげたいという気持ちがありました。最初は大手の某メーカーの3DCADを検討していたのですが、IRONCADを紹介をしてもらい、実際に話を聞いてみると、ほぼ自分が2次元で困っていたことが解消されている内容でした。鳥肌が立ちながら話を聞いた後は、もうこれしかないと固まっていました。
今回IRONCADを導入して感じているのは、三分の一以下くらいまで設計工数が本当に下がっているということです。それぐらい早いですね、設計の速度が。


製造部 設備課 生産技術Gr. 係長
瀬戸本 裕幸 氏

3Dならフィードバックのロスが少ない

(瀬戸本氏) 僕らは設計して、加工も、電気も、プログラムも全部自分でして、一人でひとつの機械を作りきる形を取っているので、とにかく時間が欲しいんです。2次元の頃は、次のステップで出た修正点をフィードバックした時の、組図も直して部品図も直すという無駄がとてもキツいと感じていたんですよ。3Dにしたことで、「ここミスしたな」と思ったら3Dのモデルを変えるだけで済むようになりました。2次元に落とした後でも、3Dとリンクしていて2D図面が勝手に変わるのでとても助かっています。それが一番のメリットというか魅力と感じていますね。


現実の加工手順と同じ

(宇根氏)私はIRONCADは使えないのですが、説明を聞いていると、私がものを加工する手順とIRONCADの手順は同じです。板材にブロックを作って穴を開けたり凹みを作ったりするのを、実際にやるか図面上でやるかの違いだけで、違和感はないんですよね。(IRONCADは)図面にするのに理解しやすい手順です。


製造部 設備課 生産技術Gr.
宇根 修次 氏

古い機械の3D化でさらなるカイゼンと技術の継承を

(宇根氏)私が作った機械や装置を(若い人に)自分で分解して触ってからIRONCADで図面にしてもらっています。そうすることで図面の中で経験が積めると思うんですよね。図面上で改善も進められます。私の入社前から使っている50年60年選手の機械も図面化してもらっていて、今最初の機械を仕上げている状態です。


TriBallで思った通りに動く

(太刀掛氏)最初はやはり3DCADは小難しいというか、操作しづらいというイメージがあったのですが、IRONCADはTriBallを使えば思った通りに動いてくれるので、結構操作しやすいですね。簡単な操作がほとんどなので、特に基本的なことは教わらなくてもできる、という感じです。


製造部 設備課 生産技術Gr.
太刀掛 聡志 氏

相手が2Dでも問題なし

(瀬戸本氏) 業者に依頼した金型の仕様を確認する際に、2次元の図面がまだ主流なんです。図面が20枚30枚と届くのですが、レイヤーを重ねた状態の図面を確認するのは結構負担だったんですよ。それがIRONCADの2Dシェイプ機能で立体をすぐ作れるようになったので、取り合いやポカミスを逆に(業者に)指摘できるような形が取れ、かなり助かっていますね。


工場レイアウトで機械がシンデレラフィット

(瀬戸本氏) 今回工場の引っ越しをしたのですが*、20台ぐらいの古い建屋の機械加工装置を、当時IRONCADを入れて2、3か月ぐらいの段階で、一週間で一斉に全部図面化しました。それを今の建屋にレイアウトしてそのまま引っ越しできたので、あれはかなり重宝しました。今までは人がよける工場だったのですが、今回は通路ありきでレイアウトしました。このスペースにこの機械が入らないかなということを繰り返して、シンデレラフィットが成り立ったり、なかなか面白い形で使うことができました。
一度フロアを図面化しておけば、かなり自由自在にIRONCADで設計できる。使いたい台車とか欲しい高さとか、簡単なものもIRONCADで設計して、机回りの環境なども全部作ることができるのは、ものすごく楽ですね。

*2018年の西日本豪雨で被災、2022年に新工場が完成


集塵ダクトの板金設計もシェル化で簡単に

(瀬戸本氏)ペン先の研ぎ作業用の集塵ダクトを作るのに、ホースだと硬くて自由なレイアウトができず、制約がありました。また、2次元のCADを使っていた時は板金ものが結構苦手でした。今は、IRONCADでブロックでほしい形を作って、シェル化で抜いて、その図面を板金業者に依頼するという形が取れるようになりました。


プロパティで金の原価計算

(瀬戸本氏)万年筆に使っている金の原価計算がなかなか大変なんですよ。以前は計算するにしても金ペンの正確な体積の求め方がわからなかったのですが、IRONCADのプロパティを使えば材料の体積が出るので、それに比重をかけると理論値が出て、色んなものを計算する基礎となるので結構助かります。


3Dなら「こう」だけで伝わる

(瀬戸本氏) ウェブ会議が世の中結構増えてきていますが、IRONCADを立ち上げた状態で説明できるようになり、今まで2次元の図面では絶対にできなかった「ここをもっとこうしたいんですよ」という説明ができるようになりました。「こう」という言葉だけで相手に伝わるのでこっちも楽で、とてもいいなと思っています。
現場の人たち、そういった環境がない人たちでも、クラウドにアップロード(ICWebviewer)して見せて説明したりできるので、とても便利で使ってますね。


カタログと情報を共有

(瀬戸本氏)カタログ機能はIRONCADの一番のウリだと思うのですが、機械設計に必要なねじや座ぐりなどのよく使うものを一通り作って、それをみんなで共有して使う形を取っています。
基本的に社内チャットを立ち上げるようにしていて、IRONCADの操作でわからないことは、IRONCADを使っているメンバーにすぐ投げかけて、解決方法がパンパン上がって来る環境を作っています。


CAD/CAMでの加工を計画

(瀬戸本氏)マシニングを導入し、今後はCAD/CAMで加工もできるようになることを目標としています。機械装置に使うパーツの半分を外注、もう半分は社内加工という形で、1カ月くらいかかったりするのですが、それがおそらく早くなるのかなと思います。


▲ IRONCADで設計しマシニングセンターで加工

取材: 2022年